最後まで残った空海の道ウォーク(後編)
最後まで残った空海の道ウォーク(後編)
柳水庵を後にして、一本杉庵を目指し歩き始めます。
これから行く先には、第4以降の遍路ころがしが控えています。
目指す、一本杉庵の標高は750mです。
行程では、柳水庵から2.1Kmで、行程の距離に対しての高低差は大したことありませんが、疲労が見え始めての2山目ですので…なかなかの難所になります。
一本杉庵のピークを通過から、1度は標高400mまで降りて、また標高720mの3山目の焼山寺を目指す、まさに「遍路ころがし」の区間を控えています。この行程を3.8Kmで行きます。
よく呼ばれる「ジグザグ」はココにあります。
この区間が「1番美味しい」と言っていいでしょう。
下り、登り…最大の難所です。

さて。遍路記に戻りますと。
柳水庵からの、短いコンクリート舗装の車道を下ります。
大した傾斜ではありませんが、固い足下に「おっとっと?」みたいな頼りない感覚を覚えます。
コンクリ車道の途中で、松尾林休憩所です。
せっかくですから…到着記念撮影をとウエストパックからカメラを取り出したところ、スタッフの方が多く着られている蛍光色ジャンパーの男性から声がかかります。
「写真ですか?」
「お願いします!」願ったりかなったり。
これより、再びスタッフの方と同行します。
単独行動のつもりでしたが、スタッフの方が同行していただければ…なお安心です。
これより少し歩道を登った後、車の轍が残る未舗装林道を進みます。
しばらく歩くと、突然に見晴らしよくなります。

さっきから気になっていたのが…。
スタッフの方は杖を2本持たれています。巧みにスキーでのストックのように使われています。
1本は市販品の金剛杖にも似た白木の杖。もう1本は野趣溢れる…失礼ながらドコかで拾ってきたような白木の棒です。
「2本あると具合良さそうですねぇ?」思わず声をかけてしまいます。
「少し重いですけど使います?」いえ、決してそんなつもりでは…。
「いえ…いえ…」「まぁ、まぁ…」みたいなやりとりの後、結局は借りてしまいます。
催促してしまったみたいで恐縮です。
あー。杖が2本あると楽だ。
これまで金剛杖を、右へ突き左へ突きしていたのが、遙か過去のことのようです。

時に12時08分。車道を離れて、第4の遍路ころがしです。
ここから急に登って、さらに一本杉庵を目指します。
見慣れた…多くの人々の歩みによって固められた山道から、さらに高所へのルートを確信します。
ここで、5~6人の後続隊に追いつかれます。
スタッフらしい腕章なりジャンパーを見られなかったので、たぶん一般参加者と思われます。
ここでペースメーカーをできるほど脚には自信がありませんし、気を遣って後続いただくのも恐縮です。
時折に、膝を上げては腹につくかと思うほどの段差を乗り越えます。さすが「遍路ころがし」かなりキます。
もちろん2本の杖は有効に活用されます。
ま、このペースだと後続の方々にも不足はないでしょう。
「うぉ!?」
右太ももに激痛が走ります。
ヤバい。足がツりました。邪魔にならないよう…うずくまります。
後続の隊はどんどん追い抜いていきます。
「どうしました?」
スタッフの方が駆け寄ってきます。駆け寄ると言うか…そんなに広いスペースでもないので追い抜く方々を見送っておいて歩み寄る…との表現が正確かも知れません。
「彼らは先に行きましたか…」残念そうにスタッフの方。
他の隊の足止めしても申し訳ないだけですし…ここは仕方ないかなぁ。
正直なところ、少しの休憩で筋肉が弛緩して、痛みが和らいだら続行する気満々です。
ちょうど、その時。
進行方向から降りてくる、頭を剃髪した若い男性が立ち止まります。わたしと同じ年頃かなぁ。
「何かありましたか?」と声をかけていただきます。
「彼が足をツったみたいで…」スタッフの方と剃髪の男性との間で状況説明がされます。
剃髪の男性…曰く「わたし治せます!」とのこと。
「痛いところはドコですか?」と尋ねられます。
わたしは促されるまま「右太ももの内側で…」と痛む部分を指さします。
「ココですか?」といきなりピンポイントに探り当てられます。
微調整をしながら、揉むでなく、押すでなく…単に指先を当てているだけで…みるみる筋肉の緊張が解けていくのが分かります。
これは、気功とか整体の部類に入るのでしょうか?
まさに「手当て」です。手を当てているだけで症状が軽減します。感動しました。
だいぶん楽になってきたところで…。
「逆打ちされてるんですか?」尋ねてしまいます。この状況でそんな余裕があるのか?
曰く「往復です」とのこと。きっと近隣の方なんでしょうか。
また、可能であれば折りにお礼させていただきたいところです。
ほどなく全快に近く、痛みが和らぎました。
どんな魔法かと思うぐらい。
剃髪の男性は「水分を十分に摂ってください」と言葉を残して去って行かれます。
十分にお礼を申し上げられないまま、後ろ姿を見送ります。

この時点で、最後尾のスタッフ隊と合流しています。
大騒動を起こしてしまっているようです。携帯電話ほか、無線機を駆使して故障者回収の手配に尽力をいただいています。
合流地点はどこ?今現在どの機関から迎えに来られる?みたいな微妙な地点のようです。
大ごとになってしまいました。
「このまま行って大丈夫みたいですが…歩けるところは歩かせてください!」尋ねてみました。
「ここからが難しいので、リタイアには悪くない地点ですよ?」とのこと。
「了解です」以外の言葉はありません。
この地点からが激しく厳しいのは承知してましたので、ひとまずリタイアします。
スタッフの方々の携帯電話、無線機から「本人は復活して歩くことを希望している!」と伝えてくださっています。

時に12時24分。柳水庵から40分ほどの地点でしょうか?
山深い歩道から、林道まで降りて迎えの車を待ちます。
20分ほど休憩します。
スタッフの方より「最後尾は一本杉庵を目指して、足の痛い人は柳水庵まで戻ると行き違いないのでは?」と提案されます。
「時間が合えば再び合流も可能」とのこと。
スタッフの方1名が…わたしについてくださって、後退への面倒を見てくださるとのこと。
もう、道中も大変に恐縮で。
わたしから口を開ければ、「ごめんなさい」「お騒がせします」しか出てきません。
スタッフの方は慰めてくださいます。
「自力で歩いて行けるから助かります。『背負って下山』とかだと大変よ!」
そう言っていただけると…少し気も楽になります。

20分ほど下って、柳水庵近くの石碑まで戻ります。
13時頃に到着です。ひどく遠く感じます。
スタッフの方より「ここから動かないでくださいね!」と伝えられます。
連絡、調整のため柳水庵へ向かわれるようです。
しばし待機します。
ほどなく、柳水庵の方向から5~6人の方が降りてこられます。
「迎えの来る方向へ歩いて行ったら?」「いや、行き違いないよう動かずいたほうが良いよ!」議論の真っ最中です。
毎度お騒がせして大変に恐縮です。
また、現状からベターな方向を模索していただいて恐れ入ります。
議論の最中、予想通り神山町方面から迎えの車が到着です。
空気は「言ってるうちに来たよ?」に変わります。
ビッツのコンパクトな車体に「神山町」の文字が入っているので…きっと公用車でしょう。休日の運用に感謝します。
「さぁ、どうぞ…」乗車を促されます。
「お世話になります!お騒がせして申し訳ありません」と申し上げながら、後部座席に着席します。
しばしスタッフの方々は、柳水庵で無事に「足の痛い人」を回収したこと、歩き部隊の最後尾への合流を希望していること、など携帯電話でやりとりされています。
県道245号線から神山町内へ向けて下り始めます。
道なりに進むと、今回のゴール地点「鍋岩おへんろ駅」まで到着します。
時間の折り合いがつけば、歩き部隊の進む遍路道と県道43号線との合流地点へ送っていただけるとのことです。
見覚えあるアスファルト舗装の車道で下山します。
時折に雑談、スタッフの方から現在位置を他のスタッフに知らせる…携帯電話での通話がある以外は沈黙も多く。
ここで、わたしが雑談の音頭でもとれれば趣も違ったと思われますが、少し照れて、恥ずかしくて余裕がありません。
しばしの走行の後、スタッフの方の携帯電話が鳴ります。
「歩きの最後尾が一本杉庵から降りきって、最後の登りにかかった」とのことです。この時点で合流は不可能になりました。
「このまま、鍋岩おへんろ駅へ向かいます」スタッフの方より。
「了解しました…」申し上げます。
わたしの日頃の運動不足、不摂生、そして「3山越えを甘く見ていた」ことから生じた事態です。言わば「不徳の至り」でありますが…少し悲しくなります。
お大師さまにも嫌われてしまったかも?

13時38分。鍋岩おへんろ駅です。今回の行事で「歩きのゴール地点」です。
美味しいところを、ばっさりショートカットしてしまいました。
神山町役場の方にお礼を申し上げて、公用車より降車します。
ここで、スタッフの方のお子さんと出会います。きっと、少年は3山越えて来られたのでしょう。
親子の会話が始まります。聞き耳をたてるのは野暮なので少し距離をおきます。
たぶん「この兄さんを焼山寺まで送っていくから!」「じゃ、一緒に行く!」みたいなことになったのではないでしょうか?
そして、スタッフの方、そのお子さん、わたしの3人で、ピストン輸送されている登りマイクロバスに乗り込みます。
14時頃。第12番札所「焼山寺」山門の直下付近でマイクロバスから降車します。
平常は封鎖されている車道は、さすが本日は開かれています。
3人で石段を登ります。
すごい人出です。もう、行事の参加者か?一般の参拝者か?さっぱり分かりません。

チェックポイントです。
事前に受付でいただいていた「通過チェックカード」を係の方に手渡します。
お参りは先月に済まさせていただきましたし、散策できる余裕はありません。
さて?と思っていると、スタッフの親子さんとはぐれてしまいます。
散々にお世話になっていて、最後のお別れ、お礼を申し上げていないのは心残り。
14時15分。下山の準備を始めます。
鍋岩おへんろ駅まで歩いて降りようと思いましたが、脚に自信がなくなっていますので止めておきます。
ピストン輸送されているマイクロバスで待っていれば、スタッフの方と再び会えるかな?

マイクロバスは、なかなか満席にならないので発車しません。
さらに歩いて下りの人、マイクロバスへ乗り込んでくる人、気をつけていますが…スタッフの方親子は見あたりません。
14時30分。マイクロバスは満席になりましたので、鍋岩おへんろ駅へ向けて発車です。
結局、スタッフの方親子は見つかりませんでした。
不義理をして申し訳ございません。
14時45分。本日で2度目の「鍋岩おへんろ駅」です。
悠々と歩いていると、全行程を歩いて到着したかのようです。
ごめんなさい。大胆なショートカットをした上に、マイクロバスで要所を往復してしまいました。

今現在でも、正規のルートを歩いて貫徹された参加者の方々が、次々に到着しています。
スタッフの方が、どんどん案内されています。
「チェックカードを係に渡してください!」
最後のチェックポイントの列へ並びます。
順番がくると、お茶、記念証の「お接待」です。
こと、記念証は…イカサマしましたので…受け取りをご辞退申し上げようかと考えましたが、そのまま頂戴しました。ごめんなさい。
14時57分。
「最後まで残った空海の道ウォーク」を完歩した面々を乗せ、大型バスは第11番札所「藤井寺」へ向けて出発します。
わたしは完歩してません。ごめんなさい。
国道438号線を経由して、四国別格第2番「童学寺」付近を通過、国道192号線を西進して藤井寺さんを目指すルートです。
道中、隣席の青年と遍路話で沸きます。「納め札の交換」をします。
お話を聞いていると、先達に近い巡拝を重ねているようです。
青年は指定駐車場付近でバスから降車されます。

16時06分。
第11番札所「藤井寺」へ、若干の混雑もありましたが到着です。
本日のスタート地点まで戻ってきました。ココで曲がりなりにも、一つの節目がつきました。
せめて、スタッフの方々に改めてお礼申し上げたかったところですが、さすがに撤収済みです。
今朝に大慌てで車を置いた、指定の駐車場へ向かって歩き始めます。
田畑を縫って歩いていると、農作業をしている…お婆さんから声をかけられます。
「ひどいなぁ。(阿波弁で状況によって『大変ですねぇ』ぐらいの意)」
会釈の後に通り過ぎます。余裕がありません。

車を回収したところで、昼食を摂っていないことを思い出します。
ふと、空腹感を覚えます。これまで何ともなかったのですが、気が抜けたら体も思い出したようです。帰宅するまでが「遍路」なので気抜けするには…まだ早いのですが。
17時ちょうど。鴨島町の近いところで…うどん屋さんへ入ります。
軽くザルうどんと思っていたら、ものすごい量にビックリしますが…完食します。
土成ICから高速道路を利用して、母の家へ向かいます。
難なく18時頃の到着です。
「空海の道ウォークに参加したが完歩できなかった…残念」あたりから口数も少なく。
飲み物をもらったぐらいで、長居せず帰路につきます。
18時38分。無事に帰宅します。
心残りはあるものの、これで本日の全ての行程は終了です。
スタッフの皆さまへ。
遅刻へのご厚情をいただき、そして中途退場に際しましても、スタッフ多くの方々にご迷惑をおかけし、散々お騒がせし、多大なお手間を取らせたたあげく、最後には無理まで申し上げて申し訳ございません。
長らく同行いただきお世話になったにもかかわらず、うやむやのうちにお別れしたりの義理を欠いた場面もありまして失礼しました。
改めましてこの場を借りて、スタッフの皆さま関係者の方々へお詫び申し上げますとともにお礼申し上げます。
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コメント
本当にお疲れ様でした。
これをご拝読させて頂いて、私自身にも、いくつか思い当たる節がありまして…。
恥ずかしながら私は、身勝手・増上慢が至る部分があるのです。
周りの人間に対し、厭な思いをさせていると、思います。
しかしながら、(誠に恥ずかしい事でありますが)なかなか直せずにおります。
人のふり見て、という訳ではありませんが…気を付けたいと思います。
またスタッフの方々の様に、常に周りに気を配れるように…。
ありがとうございました。
投稿: 戦艦大和、 | 2007.05.30 23:01
ご自身から「増上慢」なんて言葉が出てくることは、素晴らしいことだと思います。
特に仏門へ入る勧めはしませんが、「常に修行」と思えば苦難も乗り越えられるのではないでしょうか?
投稿: 両眼微笑(^_^) | 2007.05.31 23:44